時間が経ってしまいましたが、
神楽の続き。
宮崎の神楽は、今週末の南川神楽で
夜通し行われる夜神楽は終了、
それ以降は昼神楽になります。
戸下は最後から2番目の夜神楽です。
行く前に心配だったことといえば、
2歳児も(怖がらず)楽しめるのか
(それ次第で親も楽しめるかが決まる!)、
ごはんを食べるところはあるのか、
寝る場所はあるのか、でした。
しかし、どれもこれも心配無用、
信じられないくらいあたたかな
おもてなしを受けて参りました。
太鼓の音は、
人をトランス状態にさせるというけれど、
娘はまさにそんな様子でした。
いつもは寝る時間になっても
目が爛々。体力もりもり。
こどもの目には、神楽はどんなふうに
写っているのだろう、と思います。
音と舞と衣と面。
大人だけじゃない、こどもだからこそ
楽しめる神楽の世界がきっとあるのですね。
ちなみに心配のひとつだったごはんは、
なんと神楽を舞うみなさんが
順々に食べられている席に
呼んでいただきました(高見先生のおかげです)。
戸下のお母さんたちの美味しい煮物や
お味噌汁、卯の花などを山もりいただきました。
(なんで写真を撮らなかったんだろう
…と後悔しています)
娘は誰よりも長居し、
手作りこんにゃくを踊りながら食べ。
おにぎりを歌いながら食べ。
舞い手のみなさんが
「おぉ、舞っちょるね。将来が楽しみだ」
とおっしゃるものですから、
その度に「すみません…
太鼓判を押していただいて恐縮ですが、
この子、女の子なんです…」と
おことわりする母なのでありました。
あるおじさまに至っては
「お母さん、なんであんた、
こんな男の子みたいな格好させてるの?」と
鋭い突っ込みを入れられました
(洋服もそうですが、夫がある日突然
短くカットした髪型にも
突っ込みどころ満載です)。
そんな楽しいディナーも終わり、
また神楽観賞に戻ってしばらくすると、
さすがのお祭り娘も眠さのピークに。
寝不足の夫とともに、
脇宿と呼ばれる、神楽の期間だけ
誰もが出入りできる民家さんに
お邪魔しまして、なんと!
こたつで眠らせていただいたのでした
(その頃、私は同じ脇宿でちゃっかり
再びごはんをいただいておりました)。
その後、御高屋に戻ってまた神楽の
世界に浸っていたものの、
ついに1時すぎに睡魔が襲って参りまして…
私も脇宿のこたつに戻って、
朝の4時半まで熟睡。
明け方のメインイベント、天照大神の
ご登場に備え、夜明け前の
御高屋へ向かいました。
やっと本題です。
今日のブログで書きたかったこと。
天照大神の大役をつとめる予定だったのが、
4歳の男の子でした。
いつもは夜が白々と明け始めるころに
番がくるらしいので、
その頃に男の子がお母さんと連れ立って
御高屋にやってきました。
舞い手の方から「●●の調子はどうだい?」
お母さん「うん、いいよ」なんて
会話も聞こえておりました。
が、まず今年の神楽はいつもより少々
ゆっくりペースだったようで、
待ち時間が長かったのかもしれません。
間もなく彼の出番である
「岩戸開き」がやってくる、という頃になって
「やりたくない!」と言うのです。
だってまだたったの4歳だものねー。
困ったお母さん、「本当にやらないの?」
「いやだ〜(泣)」。
楽屋に一歩も足を踏み入れたくなくて
泣いて拒否する4歳くん。
そんなこんなしていると、
別の男の子が眠い目をこすりながら
お母さんとやってきました。
予め立てていた代役くんの登場です。
年長さんか小学校1年生くらいでしょうか。
急に頼りがいのあるお兄さんに見えましたが、
彼も早朝の突然の呼び出しに
「やらないの? やらないなら△△くん呼ぶよ」
というお母さんの問いに、
「え〜ん、やるよ、やるってば〜」
としぶしぶ承諾。
見事、天照大神を舞いきりました。
さて、4歳の男の子。
彼に対して、パパより年上であろう
大先輩たちが次々に声をかけます。
「●●、来年はがんばろうな」
「今年は残念だったな。また来年な」
もう、みんながみんな、声がけする。
天照大神を舞った子に対しても同じ、
「おー頑張ったな」「よかったぞ」と
とにかく声をかける。
その様子に、
嗚呼、この子たちはこの地区の人が
みんなで育てているんだ!
佐々木正美さんの
『子どもへのまなざし』にある
「自分の子どもはよその人に育てていただこう、
ご近所の人たちに育てていただこう、
親戚の人たちに育てておらおう。
そのかわり自分も、よその子どもを
一緒に育てようという、
こういう気持ちを、
いつももっていることが大切です」
「子どもを育てるということは、
まず親自身が、どういう人たちと、
どのようにコミュニケーションをしながら、
地域社会で日々生きているのかということを、
子どもにお手本を示すことが
必要でしょう」の
そのまんまの世界がここにはありました。
首都圏の核家族化と同じように、
我が家の住む宮崎のマンションでも
挨拶はきちんとするものの、
コミュニケーションがないのが現状です。
地域がこどもを育てる。
地域でこどもを育てる。
それができている諸塚の小さな部落を
とてもまぶしくうらやましい気持ちで
見守りました。
ちなみに戸下のみなさんは、
「もしこの地区に住みたいという人が来たら、
みんなで全力で仕事を探してやるんだよ」
とおっしゃっていました。
(神楽を舞った若手のうち3人が、
数年前から諸塚に移住した人だそうです)。
こどもを育てる現代の環境を
じっくり考えることもできた
神楽に感謝してます!
それにしても神楽の面、
古いものでは江戸初期のものだとか。
衣装も素晴らしかったです。
娘が古く美しいものをじっくり見、
生の音に身を委ねることができる
いい機会になったと思います。
あまりの楽しい1泊2日に、
帰りの車の中で、早くも来年の
戸下行きを話し合う夫婦でございました。