キッチンで仕事していると、小僧さんが寄って来て語りかけます。
「ママは意地悪じゃないよ! ママは優しいよね!」
「?」
最近何度かこんなことがあって、ふと気付きました。
これは小僧さんなりの、気づかい。
場を和ませるためのお仕事なんです。
保育園で“意地悪”事件が発生すると、園長先生はこんな風に解決します。
「Tくんは意地悪なんてしないよ。だってTくんは優しいもんね」。
Tくんに向かって言うのではなく、周りの子供たちに言う。もちろん、Tくんも聞いています。
「優しいTくんは意地悪なんてしないんだよ」。
こう言われると、通路に座り込んで通せんぼしていたTくんも、すーっと立ち上がって道をどうぞ、となります。
小僧さんはママが不機嫌な時、この“ワザ”をママに応用していたのです。
ところが私は、そのことになかなか気付かなかった。
だって、私が機嫌悪いということに、小僧さんは気付いていないと思っていたから。
全部ばれていていたのだな。
しかも、多分私の気付かないうちに彼の実験は成功していたのだろうと思うのです。
なぜなら彼は何度も何度もこの“ワザ”を使っているのですから。
でもね、ママが小僧さんに対して怒った時は違いますよ。
「ママ意地悪だ」。
と反撃されます。
そういう夜には、絵本をめくって目がつり上がったフクロウなんかが出てくると、
「これママ。意地悪なママ」。
なーんて言われてしまいます。
それもまた、いいのだろうなあと思う。
怒られっぱなしで、全て受け止めて心にしまったら、心がつぶれてしまいます。
小さな子供なりに、気持ちをちゃんと外へ出して、昇華しているのでしょうね。