1.放射能・生活編
はじめに
3月11日の東日本大震災、そして福島第一原発事故で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
いまだ線量の高い地域で暮らしているこどもたちがたくさんいます。彼らのために私たちにできることをしていかなければならない、常にそう考えています。
それと同時に東京など関東広域も被災し、瓦礫の受け入れなど次から次へとさまざまな問題に直面しています。
東京で3月11日の震災を体験した6家族。1歳から6歳までのこどもを育てている“日々生き”の母親たちが、考えたり悩んだり、行動したりしていることをお互いに共有し、ここにあえて公表することにしました。似たような境遇の方々にとって少しでも何かお役に立てたらという思いから、深夜6時間にわたりSkypeで話し合った内容をまとめました。「生活」「食事」「体験・悩み」「移住」と4編にわけて掲載させていただきます。
Endo(以下、E 長男2歳、東京在住) 放射能についての日々生き編集会議、始めたいと思います。以前サトエさんが言っていたけれど、福島第一原発の事故があって“普通に暮らせることの奇跡”ということを実感した、と。それぞれに1歳から6歳までのこどもがいるから、本当に深刻な状況だよね。まずは生活面について、これはいわば外部被曝対策ね。みんなが埋めてくれた表(事前にアンケートを配布して完成した表)を見ながら話しを進めていきたいと思います。
●外遊び、どうしていますか?
E 外遊びのことは結構悩むよね。マオちゃんは7月初旬まで東京にいたけど、側溝や外階段で遊ぶのは止めていたのね。
Ikeda(以下、I 長女1歳、宮崎在住) 園の外遊びは普通にしていたけれど、登園途中の吹きだまりについては、止めたり止めなかったり。どちらも辛かった…。まだ歩き始めたばかりで、地面にぺしゃんって座り込むことが多かったし、なんだか異常に階段好きで(笑)、明らかにゴミが溜まっていそうな外階段に這いつくばって登っていっちゃってた。宮崎に来てからも雨が降ったら室内に入るようにしてる。
Yasuda(以下、Y 長男5歳、次男3歳、高知在住) うちは東京にいた時も外遊びは普通にさせてたよ。でも保育園から帰ってきたらシャワーへ直行。
E 同じ。結構好きなように遊ばせて、帰宅後シャワーへ。
Kaji(以下、K 長女1歳4カ月、東京在住) うちは外遊びをすること自体最近始まって、それまではなかった不安がここにきて、押し寄せている感じ。好奇心が強くて、何にでも興味を抱く大事な時期に、安心して遊ばせられない環境は本当にストレス。
Sueyoshi(以下、S 長女2歳、東京在住) 私はどうしても消極的になってしまうな。雨が溜まっている側溝に入りたがったり、雑草ボウボウの空き地に突進していったりすると、どうしても制止してしまう。そんなこと本当はしたくないし、子供もされたくないはず。なるべく安心な場所を選び、そこでは思う存分遊ばせるようにしているけれど。
Nakano(以下、N 長女6歳、東京在住) うちは年齢的にも外遊びが中心。できるだけ今までと同じように遊ばせたいと思っているから、遊ぶ場所の線量はチェックするように。保育所でも散歩に出かける場所の線量をチェックしてから遊びに出ているみたい。園庭の除染作業も父母の有志が集って週末にやってる。土の原発事故以降、雨の日に外で遊べなくなったのが残念だよ。
E うちの保育園でも線量計を購入して、毎日こまめに園舎や庭、遊びに行く公園などをチェックしてくれているから本当にありがたいよ。こどもたちが遊びに行く公園を(園児の)お母さんたちが毎朝掃除してくれているの。8月には連日、斜面の上にホースを持ち上ってり水をまいたと。園長先生のお話によると「最近は0.02μSv/hくらい線量が下がった。かなりきれいになっていってるのを感じる」。この公園は地域の人たちが運営管理を行っているのね。例年は落ち葉を腐葉土にしているけれど今年は全て回収してゴミ処理。計測するのと同時に、考えたり協力して、こどもたちのために安全な環境を作っていく。そういうこともできるんだね。
●線量計持っている?
I 私はSOEKS 01M(GM管式)を購入。実は宮崎のマンション5階でも0.12μSv/h出て焦ったこともあるの。でも、同じ宮崎に移住してきたお母さんたちの集まり「うみがめのたまご」のメンバーがRadi(堀場製作所・シンチレーション式)を持っていて、それで計ると0.05~0.06μSv/h。宮崎は風が吹いてもわりと安定しているみたいでホッとしたわ。以前みんなで集まった時、机の上に線量計がずらりと並んだことがあったな。機種によって出てくる数値が結構違うから、その線量計自体の特性を早くつかむといいみたい。
E 線量計もGM管式(いわゆるガイガーカウンター)とシンチレーション式、電離箱式があって、シンチレーション式が微妙な放射線測定に適しているとか。参考:放射線測定器について
S うちは外出時にRadiを携帯。よく行く場所の平均的な線量は把握できているので、いつもより高めの値が出ると、足早に立ち去る感じ。
E 6月に「チェルノブイリへのかけはし」の野呂美加さんが保育園(大田区内)で講演してくれて、その時に園庭や室内などの線量を計測してくれたのね。彼らが使っているのはNaI Radiation Counter(シンチレーション式)といって、とにかく事故前から計測しているからデータというか指標を持っている。園庭で0.03μSv/hという数値が出て「あれ!バックグラウンド(自然放射線量)と同じだ」って驚いてた。
I でも場所や日によって高いときがあるでしょ?
E そうね。毎日数値が違うよ。出入り口の階段付近は少し高めに出ていたり。NaI Radiation Counterと、保育園で使っているRadiを並べて計測したら、Radiは数値が1.5~2倍くらいで出ていたから指標が分かった感じ。だからうちもRadi購入を検討中。
Y 高知では身近に計測している人いないので計測器欲しいなーーー。
N うちはTERRA-P+(GM管式)。ベランダ、室内は0.07〜0.09μSv/h。北風で0.12μSv/hくらいの時もある。風向き大きいよね。そういう時は洗濯物を室内に入れたりする。
●洗濯物、その他
E 風向きと洗濯物。うーん。うちは外に干しちゃっているけど、どうなのかな?風によって入れた方がいいのだろうね。
K&S うちはほとんど浴室乾燥器。
Y うちは東京にいるときはずっと部屋干ししていて、おねしょ布団を干せないのが何よりのストレスだった。8月28日に中野の放射能から子どもを守る会が企画した上田昌史先生(NPO市民科学研究室)の勉強会へ行き「大丈夫」とのお話しで外干し解禁したな。他にどんなことに気を付けている?
N 家の中の拭き掃除をまめにするのも大事だよ!
S 娘のデトックス+ストレス発散のために、実家(神戸と鹿児島)に帰って自然に触れる機会を増やしているよ。
I シャンプー、トリートメント、歯磨き粉などの産地、原料に気を付ける。キャットフードも気にしている。紙ナプキン、紙おむつは前から使わないけれど、震災後は何があっても使いたくないな。情報源? 私は各会社に電話で問い合わせ。どこの工場で作っていますか?って。だから元ネタというより、地道な聞き取り調査、です!
●情報収集は大事!
Y 地道な聞き取り調査、素晴らしいね。講演会や勉強会も大事な情報源だよね。
N 知識をつけて、正しい情報を判断する力を持つことが大事。
S 今はTwitterが貴重な情報源。 膨大な情報が入ってくるので、自分が現在おかれている状況を客観視して判断・行動するための材料になっているかな。
I 私もTwitterをよく見てるよ。食材のこと、海のこと、危ないとTwitterで誰かがつぶやいてくれるから。学者の人ももちろん、一般人の計測値が頼りになるしね。あとスイスのmeteomedia社の拡散予報も欠かせないな。「うみがめのたまご(3.11の震災を受けて、宮崎に来たお母さんの会)」で情報入手したり。
Y スイスの予報は私も参考にしてるよ。風向きによっては日本全体を覆うこともあるね。でもあくまで予測だから自分で判断しないとね。
N 中京大学の武田邦彦教授のブログは、原発事故直後からチェックしてた。はじめから危ない、危ない!って言い続けていた武田教授のコメントは信頼性が高かったと思う。海の汚染についても早い段階から注意を呼びかけていたしね。あとお魚の放射能調査は国際環境NGOグリーンピースに詳しいデータが載ってる。
Y これからますます汚染が気になるね。悲しいけどこどもを守るためにがんばろう。それには瓦礫の受け入れにも断固ノー!を言わないとね。
全員 断固ノーです!
E ちょっとコーヒーブレイクで。次(Vol.2-2)は食事について語り合いましょう。
*Vol.2-2は約1週間後の更新予定です。