日々生き編集会議

Vol.2 2.放射能・食事編

 

 

●食卓が変わってしまった

Endo(以下、E 長男2歳、東京在住) 福島第一原発の事故があって、食卓が変わってしまったね。一物全体、身土不二というけれど、とても無理。不自然なことになっているよね。

Kaji(以下、K 長女1歳、東京在住) レシピが限られてしまうの。なるべくその時期の「生命力」のあるものを食べたい、食べさせたいと思っても、限られた食材しかないために断念せざるをえなかったり。今までだったら、秋は「きのこごはん」「さんま」が欠かせなかったのに。

Ikeda(以下、I 長女1歳、宮崎在住)& Nakano(以下、N 長女6歳、東京在住)& Sueyoshi(以下、S 長女2歳、東京在住) きのこは買わなくなった!


S 魚も大好きなんだけど東京では買ってないの。神戸に帰ると、四国産や九州産のものが結構スーパーに並んでいるから、選ぶ余地があったものの……。先日のニュースでは「大気中に放出された放射性物質は、太平洋を横断して約10日でほぼ地球を一周し、半分以上が海洋に落下した」っていうじゃない? うーん……美味しいお寿司を安心して食べられる日が来るのかしら……。

I 魚は日本海産のものを見つけた時に買うこともあるかな。でもちょっと躊躇するんだけど、テーブルに魚を並べると娘が「お魚ーー!! やったー!!」ってすごく喜ぶの……。切ないねぇ。

N うちも太平洋側のものは避けてるな。

K 私はアイスランドのカレイやアラスカの鮭などを買うこともあるよ。

E たまに紀伊半島以西のしらすは買っているけど、日本海側のしらすも探してみよう。この6家族はどの家ももともとお肉は少量しか食べないから、お肉はそれほど深刻ではないのよね。それでも産地を選びながらね。

Y(以下、Y 長男5歳、次男3歳、高知在住) 高知へ来たら魚が新鮮で美味しくてよけいに悩ましい。本当は子どもたちにも新鮮な魚を存分に食べさせたいけど、そうもいかないのが悲しいよ。

●食材、どうしていますか?

E 水、お米、野菜、お出汁。口に入れるものを選ぶことで内部被曝をゼロに近付けたいよね。

N 水は鹿児島のわっぜか。洗いもの以外、すべてこの水を使ってる。

Y うちも東京ではわっぜか水をアマゾンで買ってた。足りない分はペットボトルで。

S 同じく鹿児島の水を取り寄せてるよ。

K ハワイのウォーターサービスを宅配してもらってる。

I 私もお水はいまだ、ペットボトルに頼ってるな。九州で採取したものを買ってます。

E 色々なところの水をペットボトルで。お米はマオちゃんが宮崎で見つけてくれた「自然農園こころ」から送っていただくことにしました。みんなお米はどうしているの?

N 今のところは去年のお米を食べているけれど、これからどうしようか思案中。

Y 今後は私も九州から取り寄せようかとも考えてる。四国で安心して買えるところがベストだけど、高知は西日本のなかでは結構フォールアウトしているからどうなんだろう。玄米はどうかな? やめた方がいいのかな? うちの婆のぬか漬けにも関わる問題だ。22年産のお米を備蓄するといっても、そんなにたくさんは保存できないからなぁ。

I お米の備蓄方法について調べてみたんだけど、多めに仕入れたら農家の方が保存用に使う密封タイプの米袋を買うのが一案。それからペットボトルに小分けして冷蔵庫に保存する方法もある。うちは苦渋の決断だったけれど……冷蔵庫を2つにしたの。備蓄用にひとつ。

S にんにくと鷹の爪を一緒に入れておくと防虫対策になるのよね。

E 備蓄かぁ。酸化の問題もあるけどどうしてる?

I 毎日食べる野菜がフレッシュで抗酸化、米は放射性物質の危険のないものを、というバランスのとりかた。どうしても玄米が食べたいから、ね。みんな野菜はどうしているの?

S 野菜は熊本の自然栽培の農家さん「愛農園」から宅配。農園の園主さんが「土づくりに人生かけている」方ということで、ありがたく頂いています。みんなはどうしてる?

N うちも知人の紹介で宮崎県綾町の川上農園から野菜を送って頂いてる。

K 週1でらでぃっしゅぼーやの宅配を利用してるよ。産地限定野菜を単品で買えるから、西日本産を必要な分だけオーダーできるのがうれしいのよね

E 高知、鹿児島、熊本、福岡、宮崎と色々なところから有機野菜を宅配で。こういう時代だからリスク分散をと教えてくれたお母さんがいてね。どちらかというと興味本位で色々なところから取り寄せているのだけど。(高知:山下農園 鹿児島:ななくさ 熊本:自然派きくち村 福岡:安蔵里の食卓 宮崎:綾手づくりほんものセンター

N 四国、山口の汚染地図(参考:北海道や中国、四国にも拡散の可能性 save child)が出たもんね。関西なら安心ってことはなくて、偏ってどこかの野菜を食べるのは今後得策ではないのかもしれないね。

K 宅配で足りない分は表参道の紀ノ国屋&ナチュラルハウス、近所のオーガニック八百屋。二子玉川のライズ地下の食料品売り場でもたまに購入するかな。

N オーガニックストアで西の野菜を購入してるけど、品目のバリエーションがなくてなかなか大変。オーガニックストアでも、近県の野菜が普通に並んでいるよね。しらすの産地なども悩んでしまうな。今まで安心して食べていたものを今では産地を真っ先に見て選ばなくてはならないのは苦しい選択……。

S 小麦粉は九州産が店頭では見つからないので、あえて外国産を選ぶことも。

N 豆腐、納豆も産地記載されていないものは買わない。大豆が22年度産でも水が怖いよね。

●身近な人との情報共有も大事!

N 食材調達は旦那さんの理解も必要だよね。うちは夫がおつかいに行くと電話がかかってくる。「○○○のニンジンはOK?」とか。前にどこ産のものかわからない野菜をコンビニで買ってきたことがあって。認識があまいって、コワいよね。

E うちは夫が週末にスーパーで何か買って料理して、夜にお酒呑みながらつまむっていうのを楽しみにしているから、なかなか大変。「美味しいもの食べたいのに買えるものがなくなっちゃう」って悲しんでいるよ。

Y 家族もそうだけど、地域や学校・園との情報共有も大事だね…..。

E そうね。うちの保育園は園長先生の決断が早くて、かなり早い時期から西の野菜を取り寄せてくれていてね。水は毎週ペットボトルを持ち寄りです。

K 娘の保育園はもともと有機無農薬食材の玄米マクロビ給食を提供してくれる所だったので、震災後はわりと早いうちから西日本の食材を手配してくれていたので、そういう意味では安心だったな。

I 私は12月から行き始めた新しい保育園にもね、卵、牛乳、回遊性のある魚、きのこは食べさせたくないんです、って正直に伝えたの。そうしたら、私たちもいろいろ勉強したいので教えてくださいって。感激しちゃった!

Y 理解ある保育園の話し、うらやましい。うちは東京でも高知でも公立で正直状況は厳しいかな。いまはとにかく高知市に給食の地産地消と検査を求めたいと思ってる。高知市の疎開ママの会「虹色くじら〜save kids kochi〜」の仲間と動き始めたところだよ。

●移住してみて

Y 高知に移住して実感するのは、食べ物が新鮮なこと。東京しか知らなかったからこれは衝撃的なできごと(笑)。放射能のこととは話題がずれるけどね。週に何度も市がでて地場の野菜が買える。オーガニック市もあるのもうれしい。旬を感じるよ。

I 私もそう。にんじんは一年中あるものと思ってたしなー。綾町(宮崎県)の市場では秋になってやっと並ぶようになったのよね。これが真の姿。旬を実感してます。

E マオちゃんにお願いして宮崎からお味噌や塩麹を送ってもらったりするけれど、調味料なども安心なこともあるし、本当に美味しくてびっくりするよ。

Y 普通のスーパーではもちろん日本全国のものが流通してるよ。給食もそう。本当は子どもたちにはその土地でその土地の人が作ったものを食べさせたい!! 地産地消が十分できるのに本当に残念だな。

●出汁のこと、海のこと

E みんなが埋めてくれた表(事前にアンケートを配布して完成した表)を見ると、お出汁は本当に心配がつきないね。椎茸は放射能を吸収しやすいし、放射能が海に大量に流出してしまったから、いりこも昆布も心配。

K 出汁を作る時のかつお節、昆布、いりこなどは毎日欠かせないもんね。事故現場からできるだけ離れた場所のものを選ぶようにはしているけれど、不安だな。

N 中部大学の武田教授のブログによると、太平洋側の魚はあきらめた方がいいみたい。うちは福岡の椒房庵の茅乃舎だしを使っているよ。全て九州のものを材料にして作った、粉末ミックスの出汁。あれ? 今袋を見たら昆布は北海道産だ!

I 私はスーパーで品物を片手に電話するのよね、「これはいつ採れた昆布ですか?」とかって。すごく怪しまれる(笑)。でもその場で電話して買うかどうか判断するのが大事かなって思ってる。それで椎茸や昆布など去年のものを備蓄してるの。夏に電話してた頃は先方も不信そうな対応だったんだけど、手慣れてきた会社もあるし、ちゃんと22年度産ですってシールを貼ってあるところも増えてきたのが大きな変化かな。

N いつ採れたものなのかを確認するのは大事だね!

Y うちは出汁は、昆布とかつお節でとってる。なるべく九州とか四国のかつお節。昆布は北海道だけど……。椎茸出汁はやめた。検索してたらたまたま見かけたんだけど、こんなふうに商品の情報くれると助かるよね。築地の伏高とか最近はメーカーも対応をHPに載せてるから要チェックだね。

●お出汁、後日談

Y その後調べたら、昆布の収穫は6月~10月で、お出汁用の昆布の震災後の商品が販売されるのはだいたい11月~とのこと。なので、今までのはだいたい前年のものだったみたい。私はネットで22年度産の昆布を探してキロ買いした! 今後お出汁は昆布だけにするかな……。なるべくベジーな方向で。そういう意味でいうとかつおぶしも酸化してるもんね。長男がかつお出汁が大好きなんだけどなー。あとはいちいちメーカーに問い合わせるというのがいいね。私もこれからやってみよう。

S かつお節だけど、自分で削るっていうのはどう? うちは、枕崎産の本枯節を「オカカ7型」で毎回削って出汁をとっているよ。本枯節の製造工程は普通のかつお節より長くて、半年くらいかかるようなので、原料のかつおの水揚げも加工も去年のものがまだ販売されているみたい(11月末の時点で)。本枯節は真空パックに入っていて日持ちするので、うちはまとめ買いしちゃったよ。やはり削りたてのかつおの出汁は美味しいもん!

Y それだ! 真似します!

●食品のデータ

E 食品の放射能汚染については事故直後に「ドイツ放射線防護協会から:チェルノブイリの経験に基づき、野菜、飲料等についての提言」というのが出ていて「乳児、子ども、青少年に対しては、1kgあたり4 ベクレル以上のセシウム137 を含む飲食物を与えないよう推奨されるべきである。成人は、1kg あたり8Bq 以上のセシウム137 を含む飲食物を摂取しないことが推奨される」と。国の基準と比べて格段に厳しいけれど、こどもを育てる立場としてはできる限り厳しい基準を参考にしたいな。放射能の影響というのはまだはっきりとは分からないわけだから。うちは9月から生活クラブ生協に加入していて、全品目を測定しているというのだけど、はじめの頃は検出限界が50bq/kg前後だったのね。検査結果の表にはズラズラっと『ND』(不検出)が並んでいるけれど検出限界50bq/kgでは心配。(11月からは「子どもが多く食べるものなどを優先して検査時間を延長し、検出限界値50Bq/kg以下を目指した検査方法を導入しています」とのこと。)

S そうだよね。NDの表示だけで安心しちゃいけないよね。検出限界値いくつで不検出なのかが重要。本来こどもには1ベクレルたりとも食べさせたくないものね。GAIAというオーガニックストアは検出限界値が低いうえに(たとえば山形コシヒカリ0.69bq/kgの検出限界値でNDなど)店員さんも頼もしく「国の暫定基準値さえ守っていればいいという考えには断固反対‼」とおっしゃってた。

Y 食材によって放射能の影響の多いもの、少ないものもあるし、放射能検査データ(食品の放射能検査データ)等を参考にしていけばいいんだろうだけど、なかなか勉強しきれてない。だから宅配会社など独自で検査しているところは安心だよね。大地宅配のウェブストアは放射能不検出というカテゴリができて選びやすいよ。でもせっかく高知へ来たんだからなるべく地場のものをと思って、コープ自然派に入会してみた。ここも無添加、オーガニック食材を扱っていて測定もしている。やはり測定されているものは安心。また測定されてないものは心配だということをメーカーや生産者にどんどん伝えていくことが大事。それが生産者を守ることにつながると思う。あとはなるべく地場で採れたもの、身近な人から頂いたものはありがたく食べているよ。

S 消費者目線に立ったお店や生産者が増えてくれるといいな。

Y こどもには不検出のものをと思う一方で(値が高いものを)お年寄りだから食べていいというのはおかしいと思う。家庭ゴミも塵も積もればって思うし、おばあちゃんが「私はいいから」と言ったって、孫がいたら食材を別にするわけにもいかない。余生を不健康に暮らしたくないよね。そう思うとやっぱり食べないほうがいいよね。

食品のデータ、後日談

E 夫のおばあちゃまが静岡県で野菜やお米を作っていてときどき送ってくれるのね。本音は心配……。でも「これはおばあちゃんが作ってくれたんだよ」って、そういうことを話しながらいただくありがたさというのもあって。思い切ってたんぽぽ舎に放射能測定をお願いしてみた。1検体7,000円と安くはないけれど、送って2週間ほどで結果が送られてきた。玄米と里芋を調べてもらったけれど「不検出」と。電話で聞いてみると「1bq/kgでも2bq/kgでも、数値が出たら表記してお知らせしている。ただし完全に0ということは絶対にあり得なくて自然界の放射能が0.0いくつというレベルでは含まれているもの」ということでした。

●免疫力アップ!

E 食べ物のこと、他にできることがあるかな?

Y 野呂さん(チェルノブイリへのかけはし)講演会でも話があったけど、放射能の影響で免疫が落ちると。病気になる=体が酸化すること。酸化していないものを食べる、油を避けて酵素のある生のものを食べるといいらしいよ。油のお菓子、お煎餅なんかも酸化している。酵素ジュースもいいみたいね。我が家はおめざに果物をジューサーで絞って飲んでるよ。あとはお米、みそ汁、漬け物(発酵食品)を頂くこと。体を酸化させないように野菜中心の食事を心がけることかな。

I うちは酵素ジュースを飲んでるよ。宮崎市で18年間無農薬、無化学肥料で野菜、果物を作ってあいる「夢こだわり館」の「フェルチタ」という手作り酵素シロップ。季節にあわせて野菜果物が変わるので、味も少しずつ変化してる感じ。少量を娘にもあげてるの。

S 「溜め込まない」ように心がけているかな。水分をしっかりとって、和食中心にして、よく噛んで食べて、巡りの良い体と心であるように。

K 先日保育園の栄養講座の先生が「放射能、放射能と言っているけれど添加物だって放射能と同じくらい怖いのよ」と。そもそも気をつけなければいけないことって他にもいろいろあるよな~とも思う。

Y 確かに。こどもを産んでからは特に農薬や食品添加物、遺伝子組み換え、薬や洗剤の合成化学物質、電磁波や経皮毒なんかも気になってたけど、この放射能の問題は思わずそれらが霞むくらいの打撃で…..。

E 放射能についての編集会議、まだまだ続きます。この後(vol.2-3)はお互いの体験や悩みを共有しましょう。

*vol.2-3は約2週間後の更新予定です。